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ソーシャルワーク研究会便り3

2020.7.7

松山真


薔薇は薔薇色

「薔薇色は何色か?」。上智大学大学院の松本栄二先生は、「ソーシャルワーカーらしい仕事が出来るところで働きたい。」と言ったわたしに、唐突にこの質問をぶつけてきた。何を言っているのか分からず戸惑いながら、赤・黄・白・黒と色を思い浮かべおずおずと「色々あります。」と答えた。


 大学からそのまま大学院に進んだわたしに、松本先生は「ソーシャルワークは実践だから現場で働きながら勉強しなさい。どんな職場が良いか?」と尋ねられた。大学時代に精神科病棟で当直のアルバイトを2年していたことから、医療ソーシャルワーカーになりたいと考えてはいたが、実際のところ「ソーシャルワーカー」という職種がどこでどのような仕事をしているのか明確では無かった。わたしの中で「ソーシャルワーク」とは、当時の分類「ケースワーク・グループワーク・コミュニティワーク・アドミニストレーション・調査・ソーシャルアクション」の全てを行う者というイメージであり、実際に仕事をするのであれば、どこかに偏らずその全てを行いたいと考えて居た。しかし実際にはそれら全てを実践している職場など思いつきもしかなった。そこで「ソーシャルワーカーらしい仕事が出来るところで働きたいです。」と返事をしたのだった。

 「色々あります。」と答えたわたしに、松本先生は続けて「そうだろう。ソーシャルワークも同じだ。薔薇の色が薔薇色なのであって、ソーシャルワーカーがしていることがソーシャルワークなんだ。」と話された。分かった様で分からない禅問答かと思うやりとりだった。


【行為によって規定されないソーシャルワーク】

 医師は「医行為」を行う職種であり、看護師は看護を専門としている。同様に、介護、調剤、調理などのある特定の行為を行うことで専門職が成立している。そしてその行為を業務として整理し、業務マニュアルを作成することによって達成度を測り、専門性の質を担保しようとしている。最近は業務にレベルを設定し『ラダー』としてマニュアル化することで、職位に対応した業務という形に表している。

 しかしソーシャルワークは看護や介護のように行為によって専門を規定することが困難で有る。経済的問題の解決、家族問題の調整などと扱う問題を列挙したとしても、それらを専門的に対応する職種は他にも存在するのであって、ソーシャルワークの専門性を表すものにはならない。

「ソーシャルワーカーがしていることがソーシャルワークなんだ。」を突き詰めていくと、「ソーシャルワーカーが、ソーシャルワークとして行ったことがソーシャルワークである」となり、最終的には「自分がソーシャルワーカーであるかどうか」が問われることになる。それではソーシャルワーカーは何を持って「自分がソーシャルワーカーである」という自覚やアイデンティティを持つのだろうか、あるいは「わたし個人ではなく、ソーシャルワーカーという専門職として行った。」と言える根拠をどこに求めるのだろうか。

【源泉から湧き出る価値を基盤として】

 同志社大学名誉教授であった嶋田啓一郎先生は、『価値は社会福祉活動の全過程を貫徹する実践行動の動因(the cause)であり、常に社会科学的知識をその実践行動の正確さを保証する必須の手段として、基本的人権の疎外要因と戦う活動力( the driving force )の源泉にほかならない。』と述べている。「実践行動の動因」であり「実践行動の正確さを保証する必須の手段」として「価値」を認めている。もちろんこれは個人の価値観ではなく、ソーシャルワークの価値である。専門的価値を理解し内在化することが出来れば、人や社会や出来事を見たときに、「これはいけない」「これはなんとかしなければならない」という思いが源泉から湧き出してきて、実践行動の動因となって自分を衝き動かしていく。そしてその実践行動がソーシャルワークであるかを規定するのは、行為では無く価値であるといえる。


 病院においてソーシャルワーカーとして18年8ヶ月実践し、大学でも丁度18年3ヶ月が過ぎた。病院と大学では求められる行為や業務は大きく異なっているが、私自身の意識の中では今でも病院時代と変わらず「ソーシャルワークを行っている」。 ミクロとしては、キャンパスを歩きながらいかに学生を個別化できるかを意識し、メゾとしては、「学生の利益のために」を基軸としてルールの改変やキャンパスの環境整備を訴えてきた。現在も36年前と同じ価値・基準に従って実践行動を導き出している。わたしにとっては、大学においてソーシャルワークをしているという意識である。他者から何色に見えているのかは分からないが、私自身はソーシャルワーク色であると思う。

立教大学 松山 真

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