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ソーシャルワーク研究会便り14

2022.4.22

REGIONOグループ 代表者 中島 康晴


「出逢い直し」を起点としたソーシャルワーク ‐「社会変革」を促進する方途を探る‐


 国際定義上、ソーシャルワークは、人びとのエンパワメントと解放のために社会変革を促進する専門職であることは明白である。このソーシャルワークの中核に位置付けられている「社会変革」が、少なくとも日本ではその停滞がみられている。

 その原因の一つとして、この「社会変革」の対象が、マクロ領域の権力・権限保有者に向けられたものとして共通理解されている点を取り上げた。他方で、ソーシャルワークの現状を鑑みれば、約98%の社会福祉士・精神保健福祉士は、主として社会福祉制度に位置づけられた事業の被雇用者であることがわかる。このような立場にあるソーシャルワーカーが、マクロ領域の権力・権限保有者に対するアプローチに主眼を置いた実践を展開することは困難であると考えられる。

 加えて、この領域への変革だけが、「社会変革」の唯一の方途であるかといえばそうではない。「人びと」の身近にある家族・地域住民・専門職等が、社会的統制の観点から、「人びと」を抑圧していることは大いに散見される事実である[i]。これまでのソーシャルワーカーは、ここへのアプローチが停滞していたのではないだろうか。

 以上の問題意識を掘り下げて検討するに際し、REGIONOグループでの実践を俎上に載せた。そこで明らかとなったことは、多様な立場の人びとが、同じ地域でともに共住しているものの、「出逢っていない」という事実であった[ii]。そして、この「出逢い」の不在が、階層的分断を深化させ、「人びと」を排除する関係構造に逢着していることを取り上げた。

これらの関係構造を変容するために、REGIONOグループでは、「人びと」のストレングスに着目し、それを地域における活動や役割に生かしつつ、地域住民と「人びと」の「出逢い直し」を意図した実践を展開していることを紹介した。そして、このような関係構造の変容が、地域で暮らす個人のアイデンティティの変化に結び付いた事例を提示した。このような個人のアイデンティティの変容が、その個人を形成する集団や地域の変容につながり、それがやがて、大きな社会の枠組みを変革していく一つの道筋があることを披瀝した。「社会変革」の起点には、個人の関係構造の変容があるというわけだ。

 もちろん、マクロ領域の権力・権限保有者に対する直接的なアプローチは重要であるし、それを否定しているのではない。ただし、これを唯一無二の「社会変革」であると捉える風潮を変革しなければ、多くのソーシャルワーカーにとっては、これを諦観したり、自信を喪失することにつながってしまうのではないだろうか。

 これらを打破するために、まずは、より小さな社会環境を変革していく実践と実感がソーシャルワーカーに求められるだろう。これらの「成功体験」の積み重ねが、ソーシャルワーカーとしての自負心とさらなる「社会変革」に向けた展開を後押しするものと考える。

私は、このような展開を、「ソーシャルワーカー」をソーシャルワーカーとして解放するための営みであると捉えている。ソーシャルワーカーが解放されなければ、私たちは、人びとを解放することなどできないからである。

[i] 社会福祉領域において、「利用者」「クライエント」「当事者」などと呼称されている人びとのことを「人びと」と表記することにする。その理由としては、これらの呼び方が、選別主義に依拠していることに加え、専門職の「人びと」に対するパターナリズムや専門職の権威主義にも連なっていると認識しているからである。 [ii] 「出逢い」と「出会い」を次のように使い分けて用いることにする。「出会い」には、偶発的なものや非意図的なもの、挨拶程度のかかわりの密度の低いものを想定しているが、「出逢い」は、その範疇にとどまらず、より積極的に、互いの存在を認識しながらなされるものとし、であるがゆえに、そのかかわりの密度はおのずと高くなるものとして捉えていく。

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