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ソーシャルワーク研究会便り8

2020.12.3

高野八千代


1.実践と研究について思うこと

 東洋大学の藤林先生とのご縁で本研究会をご紹介いただき、11月21日に「アメリカの学部におけるソーシャルワークの学び」と「アメリカのプライベートプラクティス」の2つのテーマでお話をさせていただきました。「アメリカのプライベートプラクティス」は上智の博士前期課程の研究テーマでしたが、日本のソーシャルワークとの関連性については十分な探索ができず、アメリカの実態報告に留まった感がありました。個人的な興味・関心が先行し、十分に研究計画を練らなかったことが反省です。研究とは、単に個人的な欲求を満たすのではなく、関連分野や社会への還元を目指すべきものと大学院で教わりました。指導教授からは大学院修了に際し、研究の視点をもちつづけながら実践の場に立つようにとの言葉をいただきました。

 社会福祉士取得後、精神科ソーシャルワーカーとして実務経験を積み、現在も相談支援専門員を兼務しながら相談支援事業所の管理者として働いていることもあり、現在感心を寄せている研究テーマがあります。一つ目は「障害者の年齢、性別、障害種別、家族構成、活用している社会資源との関連において、相談内容の量と質に差があるか否か」で、二つめが「相談支援事業所に勤務する管理者の困難・ストレスの程度は、管理職に就く前のキャリアパスと関連があるか否か」の2つです。

しかし、実際に調査研究を進めるには、時間的なことは勿論のこと、研究支援の点で課題が残ります。例えば、一つ目のテーマについては、かなり前から事業所の相談支援専門員が作成したケース記録を数値に置き換えてデータを集積しており、統計処理の技術指導を受ける準備もしていますが、「人を対象とした研究」であり、研究倫理の手続きが事後になってしまうことや、相談支援事業の委託元(自治体)の同意や支援対象者の同意など解決しなくてはなりません。実践者が研究を行うには、先行研究調査に必要なデータベースへのアクセスや倫理審査の申請先など、大学院等の研究機関に所属していない限りハードルは高いと感じています。そのため、再度大学院に籍を置くことも時々考えます。

2.コロナ禍のICTの活用促進で思うこと

 今年のNASWオハイオ支部のカンファレンスはバーチャルで実施されました。日本とマイナス14時間の時差はありましたが、通信上のトラブルもなく、講師や参加者とZoom上で繋がり、講義と質疑応答も集合研修と同様の質が担保されていたと思います。基調講演と分科会の録画映像の視聴も可能であり、継続教育の単位証明書もWeb上で発行されるなど、会員へのサポートも工夫されていました。移動時間を割かずに研修に参加できることは会員のメリットであり、NASWではバーチャルのカンファレンスが標準化されそうです。日本社会福祉士会の各種会議や研修もZoomで行うことが多くなりました。

 日本でもアメリカでも職能団体がバーチャルによる会議や研修を行う場合、実施目的の達成は集合と同様の効果が得られると思いますが、会員同士のつながりや関係性の深まりは直接的な会員同士のふれあいによるものが大きいと思います。この度のソーシャルワーク研究会での話題提供の機会をいただいたのも、日本社会福祉士会の調査研究事業を藤林先生とご一緒させていただいたご縁があったからですし、「アメリカのプライベートプラクティス」の研究もアメリカのソーシャルワーカーとの顔の見えるネットワークによって可能になったものでした。 今後も可能な限り、face-to-faceの関係性を大切にしていきたいと考えています。

3.雑感

 11月21日の研究会の意見交換の場で、北島先生からZoomでアメリカのソーシャルワーカーとディスカッションができないかご提案がありました。NASWの会員さんは皆さん優秀かつフレンドリーであり、私も含めて皆さんのネットワークを駆使すれば時差の問題はあるにしろ、実現可能性は高いと思います。オハイオ支部の事務局長のDanielle Smithさんとはメイルでのやり取りはよくしていますので、お願いしてみることは可能です。研究会の皆さんはスピーキング、ヒアリング共に大丈夫な方も多いようですので、実現できたら楽しいな、と個人的には思いました。


南魚沼福祉会相談支援センターみなみうおぬま 施設長 高野八千代

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