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ソーシャルワーク研究会便り1

2020.4.19

北島英治


1.二人の会話

 A:「ソーシャルワーク研究会って、なにをするところなの?」

 B:「さあ~」

 A:「ソーシャルワークの理論や技術を研究するとこなんじゃないの?」

 B:「ちがうよ」

 A:「え?ちがうの・・」

 B:「だって、“ソーシャルワーク”というのは、どこにもないよ・・・」

 A:「“ソーシャルワーク論”というのが、あるじゃん」

 B:「そんなものどこにもないよ」

 A:「“その名”の<本>を見たことがあるよ」

 B:「“パイプ(Pipe)”というのは、どこにもないんだと言った人がいるんだ」

 A:「パイプって、ちゃんとあるじゃん・・・」

 B:「それは、ある国のひとが<あるもの>を見て“パイプ”と<言った>だけだよ」


2.“ソーシャルワーク”って、いったいなに?

 これは、フーコーのテーマを少しアレンジしたものです。わたしたちは、グローバルな世界のなかで、今まさに歴史的に未曾有の体験を共有している真っ最中です。“この体験”は、わたしたちひとりひとり、ユニークなものなのでしょう。その見方や感じ方も千差万別なのではないでしょうか。<私>の“この体験”を、医療的に、経済的に、あるいは政治的に考え、あるいは、“不安”を感じ、電話やメールで他のひとと<語り合い>をして日々をすごしています。

フト、見るようになった新聞の<記事>から

 私は毎朝、Japan TimesとNew York Times (International)を見てすごしています。もちろん、日本の新聞やテレビを見て、どのようにウイルスが広がって、自分はそれにかからないようにするにはどうすればよいか、といったことから、新聞を読みテレビを見ています。それだけではなく、多くのウイルスに関する“記事”の中においても、フト、目にとまる“記事”があるのに気付きました。それらを切り取ってあつめたうちの二つの記事だけですが、その一部をとりだしてみました。

(1)Thursday, March 26, 2020 (The Japan Times)

Abuse activist fear an ‘explosive cocktail’: As virus confinement measures keep families at home, fear of domestic violence rise. “As the world’s families hunker down, there’s another danger, less obvious but just as insidious, that worries advocate and officials: A potential spike in domestic violence as victims spend day and night trapped at home with their abusers, with tensions rising, nowhere to escape, limited or no access to friends or relatives – and no idea when it will end. (Jocelyn Noveck, AP)

(2)Thursday, March 12, 2020 (The New York Times International Edition)

Virus puts America’s homeless at special risk: Those living on the streets are doubly vulnerable, as many have medical issues. As the head of a shelter for the homeless in San Diego, Bob McElroy know firsthand how epidemic can turn deadly for people living on the streets. Three years ago an outbreak of hepatitis A, an otherwise preventable and treatable disease, killed 20 people in San Diego County alone, most of them homeless. Now as the coronavirus spreads across the United States, Mr. McElroy is faced with a new threat, one that he can only hope to ward off with a stockpile of hand sanitizer. Under a single tent in downtown San Diego, his shelter sleeps more than 300 people most of them over 50 years old. Numbered bunk beds are spaced just two feet apart. (by Thomas Fuller)


ソーシャルワークのグローバル定義に見る

 その他にも、移民や難民の人たちの記事として、Crowded in camps, Rohingya Muslims vulnerable to virus といったものもあります。このような記事に、目がフトむいてしまうのは、その記事の中にでてくる共通の“ことば”があるからなのでしょう。それらのひとつに、“vulnerable”という“ことば”があります。その“ことば”を、『ソーシャルワークのグローバル定義』の中にも見ることができます。いや、むしろ、その『定義』の「中核となる任務について」の中に「不利な立場にある人々」や「脆弱で抑圧された人々」、つまり、社会の中の“vulnerable people”のことを知っていたから、フト、そのような“記事”に目がむくようになったのだと思います。

 1900年代、世界が変わろうとしているとき、膨大なひとびとが移民として、アメリカへとわたり、ニューヨークやシカゴに住み着きました。その“新移民”と言われるひとたちは、差別や排除を受けることがあり、社会の中の“vulnerable people”でした。そのひとたちに対する慈善協会(COS)で働く友愛訪問員の活動を、リッチモンドは“サイエンティフィク・チャリティ”と呼び、その後、“ケース・ワーク(Case Work)”と<言った>のです。先に、“ソーシャル・ケースワーク”や“ソーシャルワーク”があったのではありません。先に、“vulnerable people”がいて、そのひとたちに対する<プロとしてのプラクティス>がはじまり、それを“ソーシャルワーク”と<言った>のです。

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